國學院大學 平成29年度SYLLABUS

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科目名 教員名
考古技術学2(2) 中村 大

開講詳細

開講キャンパス 開講時期 曜日 時限 開講学年 単位数
渋谷キャンパス 集中 サマーセッション サマーセッション 34 2

講義概要

授業のテーマ

 歴史学研究に活用できる地理情報システム(GIS)や統計解析の分析手法ついて学ぶ。数量データの多少を客観的に評価する、分類の基準を見つける、空間分布の偏りを地図で表現するなど、定量的分析は歴史学に役立つ技術である。本講義は、地理情報システム(GIS)や統計解析の基礎的な知識および技能の習得を目指す。コンピュータを用いた分析は、第三者による検証が可能であり、論文の客観性や説得性を高めるために有効な手法である。さらに、分析データを効率よく管理できるデータベース構築の基礎知識についても解説する。この技術も各自の研究に役立つはずである。
 ソフトウェアの改良が進み、細かな数学的知識がなくても、「何がわかる分析か」を理解していれば分析を試みることができる。ソフトウェアを実際に使ってみてから自分の研究への使い道を考えようという、「とりあえず挑戦してみる」姿勢が意外な発見をもたらすこともある。

授業の内容

 統計解析とGISのソフトウェア操作実習を中心とした授業を行う。マニュアルを配布し、各自が加筆を行い講義終了後も自主的な訓練を継続できるノートを作成する。
 統計解析の実習(2~5回)では、Excelを使うデータの標準化やヒストグラムの作成、Rを使用した多変量解析を学び、データの評価や分類を客観的に行う方法を習得する。各分析の計算方法についても解説し、分析手法への理解も深める。データベースについては、Excelを用いて簡便なリレーショナル・データベース(RDB)を構築し、データをより安全に保管し、使いやすく整理する方法を学ぶ。
 地理情報システム(GIS)の実習は2つのユニットで構成される。
 ユニット1:GISで主題図を作成(6~8回)では、ArcGISの基本的な操作方法を練習しながら、データの分析結果を地図で表現する主題図の作成を行う。様々な表現方法や画像ファイルの作成方法、座標系などの関連知識も習得する。
 ユニット2:GISで空間分析(9~12回)では、時代別の遺跡分布図作成作業をつうじてSQL(構造化問合わせ言語)を用いたデータ抽出方法、2つの要素の空間関係を分析する空間検索の使い方などを練習する。また統計解析による分析結果の評価方法も学ぶ。
 専門用語は難解にみえるが、興味があれば十分に理解できるレベルである。積極的に参加すれば、コンピュータを用いた歴史研究の未来可能性を体感できるだろう。なお、講義計画は受講者の進捗度に応じて随時調整を行う。なお、自分の研究データを持ち込み、データベースに作り替える、統計解析で分析してみる、緯度経度情報を取得してGISで地図化してみる、という試みも歓迎する。希望者は第1回の授業時にデータをUSBなどのリムーバルメディアで持参すること。

到達目標

【技能・表現】
・ソフトウェアを使い統計解析、GIS分析、データベース管理を行うことができる。
・統計解析や空間分析の結果を視覚的に表現し、結果の解釈を行うことができる。
【知識・判断】
・統計解析やGIS分析、データベースに関する基礎的知識を理解し、説明できる。
・データの分析を行うときに、必要な統計処理を選択できる。
・データの空間解析や地図化を行うときに、ArcGISの諸設定を適切に選択することができる。
・歴史学における統計解析や空間分析などの定量的分析の有効性を説明できる
【関心・意欲】
・自分の研究にArcGISによる空間分析やRによる統計解析をどのように活用するのかについて考え、技術と知識の習得に自主的に取り組むことができる。

授業計画

第1回 GISと統計解析を活用した研究事例を紹介し、本講義で習得する技術が、縄文時代から近代まで、各種の資史料に適用できる汎用性の高い分析であることを理解してもらう。受講者の研究にどのように活用可能かについても考えてみたい。
【準備学習 30 分】
⇒自分の研究テーマと目指す結論について説明できるようにしておくこと。
第2回 統計解析(1) データの標準化について解説し、Excelで標準化得点(Zスコア)を算出する。実習用に明治十年全国農産表の穀類データを用意する。標準化により各データ群の平均値が0、標準偏差(ばらつき度合い)が1となる。これにより、例えば、平均より多い値はプラス(+)の数値で示され、1.0以上ならば統計的に相当多いと評価できるようになる。共通の数値指標でデータの多寡の評価や比較ができる便利な方法である。
【準備学習 60 分】
⇒標準化得点(Zスコア)について調べておく。
第3回 統計解析(2) ヒストグラム(度数分布表)の作成方法をExcelの操作実習を通じて学ぶ。数量データの分布状況を視覚化できる手法であり、データの分類を考えるときに役立つ方法である。外れ値の除外、階級幅の適切な設定など「よいヒストグラム」を作成するための注意点についても解説する。
【準備学習 60 分】
⇒ヒストグラム(度数分布表)について調べておく。
第4回 統計解析(3) 統計解析ソフトウェアのRを使いながら主成分分析を学ぶ。主成分分析は数量データに用いる多変量解析で、データ間の相関関係を少数の主要成分(関係軸)に要約して複雑なデータ間の総合的関係を把握する分析手法である。データ相互の関係は散布図としてわかりやすく視覚化できる。データの標準化・ヒストグラム・主成分分析を総合してデータの分類(明治十年の穀類生産の類型化)を試みる。
【準備学習 60 分】
⇒主成分分析について調べておく。
第5回 統計解析(4) データベースの基礎。統計解析やGISによる分析を行うためのデータを使いやすいフォーマットでしかも安全に蓄積しておくためのデータベース構築法を学ぶ。Excelを用いた簡便なリレーショナル・データベース(RDB)の構築方法、そのために守るべきフォーマットのルール、便利なExcelの関数について解説する。
【準備学習 60 分】
⇒リレーショナル・データベース(RDB)について調べておく。
第6回 GISで主題図を作成(1) ArcGISに地図データやデータ表を読み込ませ表示するための操作手順を学び、前日に作成したExcelのデータ表(明治十年の穀類生産データと類型)を、ArcGISのテーブル結合機能を用いて地図上に表示する方法を練習する。色やシンボルを変えてわかりやすい主題図を作成し、方位・縮尺・凡例などを追加して画像として書き出す方法を学ぶ。成果物として各自が作成した地図画像ファイルを提出する。
【準備学習 60 分】
⇒事前にアップロードされるマニュアルを熟読しておく。
第7回 GISで主題図を作成(2) 標高地図の作成方法を学ぶ。よく使われる地図の一つである段彩図(標高別に色分けした地図)を作成する。国土地理院のサイトからデータをダウンロードし、ファイル形式変換作業とArcGISへの読み込み、陰影起伏や段彩加工などを練習する。地図表示の基礎知識となる座標系の種類と適切な設定方法についても解説する。
【準備学習 60 分】
⇒事前にアップロードされるマニュアルを熟読しておく。
第8回 GISで主題図を作成(3) ベースマップ(背景となる地図)の整備を行う。標高地図にレイヤで河川・湖沼・行政区域など各種の地図データを重ね合わせることで見やすい地図を作成する方法を学ぶ。公開されているGIS用のデータの入手方法や、ArcGISのマージ機能(ポリゴンの結合)など加工方法を解説する。
【準備学習 60 分】
⇒事前にアップロードされるマニュアルを熟読しておく。
第9回 GISで空間分析(1) 実習用データで分析の元になる富山県の縄文時代~古代の遺跡分布地図を作成する。国土交通省が公開している地形区分図をベースマップに使い、前日に学んだマージ機能で午後の分析に適した地形区分図にカスタマイズする。また、報告書などに緯度経度情報がない場合の座標値の取得方法や、60進法から10進法への座標値変換などについても学ぶ。
【準備学習 60 分】
⇒事前にアップロードされるマニュアルを熟読しておく。
第10回 GISで空間分析(2) SQLのSELECT構文入門。SQL(構造化問合せ言語)を活用してGISに読み込んだデータから必要なデータだけを的確に検索・抽出する技術を練習する。SQLによる検索・抽出を用いて一つの遺跡地名表データから時期別の地図が簡単に作成できるようになる。データベースとArcGISの連携性を高める重要な機能である。
【準備学習 60 分】
⇒事前にアップロードされるマニュアルを熟読しておく。
第11回 GISで空間分析(3) ArcGISのBasic版で可能な空間分析の一つである空間検索の実技練習を行う。作成した富山県の縄文時代~古代の遺跡分布地図を用い、時期別ごとに地形別の遺跡数を集計した表を作成する。また、ジオメトリ演算の機能を学ぶ。この機能を使うと各地形の面積などさまざまな地理情報をベースマップの情報に簡単に追加できる。
【準備学習 60 分】
⇒事前にアップロードされるマニュアルを熟読しておく。
第12回 GISで空間分析(4) ArcGISの分析結果をカイ2乗検定で評価する方法を練習する。統計解析を用い、富山県内の各時代における地形区分別遺跡数の違いに有意な意味があるかどうか(偶然によるものではないかどうか)を評価する。GISと統計解析が連携することで客観性の高い分析を行うことができることを理解する。
【準備学習 60 分】
⇒カイ2乗検定について調べておく。
第13回 受講者各自のデータを解析する。ただし、希望者がいない場合、あるいは受講者の進捗状況により、統計解析やGISの追加練習に切り替える場合もある。
【準備学習 60 分】
⇒分析を試してみたい自分の研究データを整理しておく。
第14回 受講者各自のデータを解析する。ただし、希望者がいない場合、あるいは受講者の進捗状況により、統計解析やGISの追加練習に切り替える場合もある。
【準備学習 60 分】
⇒分析を試してみたい自分の研究データを整理しておく。
第15回 質疑応答とディスカッション。情報処理実習を通じて、定量的分析の応用の仕方、活用の注意点、結果の解釈についてなど、各自の研究にフィードバックする見通しをどのように得たのかについて議論を行う。
【準備学習 60 分】
⇒分析を試してみたい自分の研究データを整理しておく。

※履修している学生に対して事前に説明があった上で、変更される場合があります。

授業時間外の学習方法

当日の講義終了後に、各自で復習およびノート作成を進め、反復練習を自主的に行うことが必要である。講義の性質上、復習が重要である。1日あたり60分程度は必要であろう。

受講に関するアドバイス

 パソコン教室にインストールされているソフトウェア(Word、Excel、R、ArcGIS)を使用するため、授業時にはKEANの利用者IDとパスワードや教室の利用解説など必要な準備を整えて参加すること。また、開講日前日までに、KSMAPYに教材データをアップロードするので、USBメモリなど情報教室のパソコンに接続可能な外部記憶装置にダウンロードし当日持参すること。
 また、自分の研究データを持ち込み、データベースに作り替える、統計解析で分析してみる、緯度経度情報を取得してGISで地図化してみる、という試みも歓迎する。希望者は第1回の授業時にデータをUSBなどのリムーバルメディアで持参すること。

成績評価の方法・基準

評価方法 割合 評価基準
平常点 100% 技術習得に必要な作業に意欲的に取り組み、うまくいかなくても投げ出さずに挑戦しようとしているか、講義への参加態度を重視する。その成果として作成した地図データを2個、授業時に提出する。

※すべての授業に出席することが原則であり、出席自体は加点の対象になりません。


注意事項 実技訓練が多くを占めるため、欠席が2/3を超えるとR評価とする。

※履修している学生に対して事前に説明があった上で、変更される場合があります。

教科書・参考文献等

教科書

なし。配布資料を用意する。また、実習用データセットを授業時に配布する。

参考文献

書名 著者名 出版社 備考 K-aiser
Rによるデータサイエンス 金明哲 森北出版
Rで学ぶ データサイエンス2 多次元データ解析法 中村永友 共立出版
ゼロからのサイエンス 多変量解析 がわかった! 涌井良幸 日本実業出版社
入門はじめての多変量解析 石村貞夫・石村光次 郎 東京図書
楽々ERDレッスン 羽生章洋 翔泳社
祭祀考古学研究におけるデータベースの構築と解析-東北地方北部の縄文時代を中心とした空間分析- 中村大・阿部昭典・加藤元康 國學院大學伝統文化リサーチセンター モノと心に学ぶ伝統の知恵と実践
縄文時代の空間認知と社会-大湯環状列石の分析- 中村大 雄山閣 季刊考古学第122号
GISによる墓地分析-縄文晩期の東北北部を例に- 中村大 雄山閣 季刊考古学第130号
『明治十年全國農産表』記載の穀類に関するGIS分析 中村大 山口大学教育学部 山口大学教育学部研究論叢第63巻第1部

参考文献コメント

データベース、多変量解析、R、SISについてわかりやすく解説している文献および考古学における活用事例を挙げている。受講前に目を通しておくと講義内容がより理解しやすくなる。受講後の自主的学習にも役に立つリファレンスである。

参考になるウェブページ

特になし